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実体験で語るAIの真価:システム化を巡る失敗で振り返るアナリティクスの効力(後編)

   

文 = 増田 武史 AIT ソリューション営業本部アナリティクス&サービス営業部 部長

筆者はAITに入社する以前、約30年の長きにわたり、大手の金融機関やSIerで働き、ときにはITソリューションの利用者として、またあるときはITソリューションのプロバイダーとしてITによる業務の効率化やビジネス変革と向き合ってきました。その中で遭遇した幾度かの苦い経験を振り返るとき、浮上してくるのがデータ分析ソリューションやAIの価値であり、有効性です。

(前編はこちらから)
実体験で語るAIの真価:システム化を巡る失敗で振り返るアナリティクスの効力(前編)

BPOで痛感したインテリジェントな自動化の必要性

前編でお話した小規模な金融ベンチャー企業A社での体験のほかにも、私には苦い経験が2つほどあります。それは、SIerでBPO事業に携わっていた2012年頃のことです。

朝8時~夜22時まで連日働く必要があった理由とは?

そのSIerでは、金融機関(以下、B社とする)のコールセンターを運営していましたが、私は同センターの責任者を一定の期間任されていました。

コールセンターの責任者は、センターの運用状況を「日次」「週次」「月次」で、お客様にレポートしなければなりません。その日次レポートのために、当時のデータ集計担当者は20時の架電業務終了後に独自の専用ツールを使って必要なデータ(架電数や接触率、成約率、通話時間など)を収集、作成して責任者の私に送るのが決まりでした。ゆえに、私が日次の結果を見るのはいつも21時過ぎでした。しかも、翌朝8時には、お客様に日次レポートを提出しなければならず、結果として私は、連日朝8時~22時(場合によっては深夜)まで働く必要があり、さすがに体調を壊し入院する事態にまでなりました。その後回復し事なきを得ていますが、今思い起こすと仕事を理由にずいぶん体に無理をさせてました。

スタッフの離職・急な欠勤などにより起こった作業品質の低下

加えて私は、B社のBPO業務として、データエントリーセンターの責任者も務めていました。

データエントリーセンターの現場業務はパートタイマーの方に頼った労働集約的な仕事で、スタッフの離職率が高く、スタッフの急な欠勤も珍しくありませんでした。その中で、スタッフの残業や増強によって決められた納品量を守ろうとした結果、作業品質が低下し、お客様からのクレームへとつながってしまうことに悩まされていました。

BIツールの進化と低価格化、AIの普及により、可能となった自動化の選択肢

これらの問題のうち、レポート作成を巡るものについては、当時においてもBIツールを使いデータの収集と可視化を自動化するシステムを構築できていれば、解決が図れたといえます。ただし当時は、そうしたシステムづくりに多額の投資が必要で、投資がセンターの収益を圧迫してしまうリスクが強くありました。しかし今日では、BIツールの進化と低価格化により、コンタクトセンターのレポート作成業務を低コストで自動化できる可能性が大きく広がっています。

加えて、コールセンターの責任者は、通話上のトラブルが発生した際に、通話記録を確認して原因を突き止め、お客様に報告する必要があります。AIを使えば、そうした通話記録の確認作業を自動化し、トラブル原因を速やかに特定することも可能になりました。

さらに、データエントリーの作業については、今日のAI-OCRやRPAを使えば、相当のレベルまで自動化が図れます。

AIは人間の能力を拡張し業務のあり方を劇的に変える

以上のように、データ分析のソリューションやAIには、従来業務の大幅に効率化できる可能性があることを、自らのつらく・苦しかった体験を通じて確信しています。特にAIは、専門知を持った人間のアシスタントとして機能したり、人間の能力を飛躍的に拡張するシステムとして機能したりすることができます。つまり、AIの有効活用によって、より少ない人員で、より多くの作業を処理することが可能になるわけです。

その意味で、AIは、慢性的な人材不足・人手不足に苦しめられている日本の企業が、自社のコアコンピタンスを維持するうえでも、事業のサステナビリティを高めるためにも必要不可欠なテクノロジーです。

そうした認識のもと、AITでは現在、AIによるお客様の業務の効率化に力を注ぎ、その一環として、社内業務にAIを適用し、その効果検証(PoC)にも着手しています。AIに対するAITの今後にご期待ください。

筆者紹介

AIT ソリューション営業本部アナリティクス&サービス営業部 部長
増田 武史