マーケティング変革事例:IBM SPSSの予測分析で顧客を知る

   

今日の消費者は、自分自身のニーズに合ったマーケティングプロモーションやコミュニケーションを行う企業を選ぶようになっています。多くの企業が、顧客一人ひとりを深く知る取り組みを実践しようとしていますが、それは容易ではありません。顧客に関する多種多様なデータ(ビッグデータ)を前に、顧客の行動を頭だけで完璧に予測することは不可能です。顧客は時には理不尽になり、時には論理的になるため、顧客像は常に変化します。しかし、IBM SPSSの予測分析によって顧客の行動パターンを一瞬にして把握し、どのような商品がいつ、どこで、誰のニーズにヒットするのかを予測することが可能となりました。今回は、IBM SPSSの予測分析によってマーケティングを成功させている2つの事例を紹介します。

IBM SPSSでビッグデータを活用
マーケティングで視聴者を引きつけ、広告主を獲得するAMC Networks

激動のメディア&エンターテインメント業界で視聴者を獲得し続けるには

米国のメディア企業AMC Networks(以下、AMC)は、IBM SPSSを導入して顧客をよりよく知るためのマーケティング施策を実施しました。同社は30年以上にわたって質の高い番組を提供し続け、ここ10年はケーブルテレビの成長に伴い、さらにハイクオリティな番組の制作に取り組んでいます。AMCの番組ではThe Walking Dead、Breaking Bad、Mad Menといった大人気作品も少なくありません。しかし、BI部門上級副社長のVitaly Tsivin氏は、「ここで止まってはいけない。主要なビジネス領域はまだケーブルテレビだが、これからメインの視聴者となるミレニアル世代(注釈1)の行動にこたえるための準備しなければならない」と語っています。

NetflixやHuluといったストリーミングサービスによって、現在テレビ業界は大きく変化しています。Tsivin氏は、「今後も成功し続けるためには、AMCは視聴者のマルチチャネル行動を理解する必要がある。混沌としつつあるメディア&エンターテインメント市場で正しい選択をするためには、どのような視聴者がいて、彼らがどのような番組を望んでいて、どうすれば彼らの関心をひくことができるのかを知る必要がある」と付け加えました。

※注釈1 ミレニアル世代(Millennial Generation):米国において1980年代から1990年代に誕生した世代のこと。幼少期よりデジタル化された生活を送ってきたため、それまでの世代とはライフスタイルなどに隔たりがあると言われている。

数週間がかかった分析をIBM SPSSで数秒間へと短縮

AMCは、さまざまなソースから情報を集めています。NielsenとcomScoreといったこれまでよく使われてきたテレビ視聴率データだけではなく、AMCのサイトでのストリーミングサービス、iTunes、Amazon、Netflixなどのデータも収集しています。こうしたデータから視聴者の好みや視聴パターンに対するさらなる深いインサイトを見つけるため、AMCはIBM SPSS Modelerを導入しました。

Vitaly Tsivin氏は、「分析が必要になった時、外注先に数十万ドルを払うよりも自社で行う方が速く、正確で、コストを抑えられる。そのため、急速なROIの向上を見込んでいる。数日間、数週間を要していた分析をIBM SPSSのおかげで数分間、数秒間で完了できるようになった」と説明します。

“(IBM SPSSによって)急速なROIの向上を見込んでいる” -Vitaly Tsivin, SVP Business Intelligence

ビッグデータ解析で新たな視聴者と広告主を

数秒間でビッグデータ解析からインサイトを引き出せるようになったことで、AMCには新たな可能性が広がってきました。視聴者の行動パターンを知ることができるようになったことで、これまで以上に的確な放送スケジュールを構築することができています。また視聴者が何を求めているのかも見えてきました。視聴者の好みを理解することで一層効果的にターゲティングでき、各番組をどの程度プッシュすれば良いかもわかりました。IBM SPSSでどの番組がいつ誰に視聴されるのかという情報が予測可能となったことで、AMCは視聴者数を増や続けています。また、高度なセグメンテーションとlookalike modeling(注釈2)によって、ダイレクトマーケティングのキャンペーン効率をも向上させました。

そして、IBM SPSS導入のメリットがもう1つ。視聴者の好みをより深く理解できたため、収集した情報を広告出向先へと共有することで、彼らもさらに効果的な宣伝を打つことが可能となりました。このように、IBM SPSSを通して引き出せたインサイトの影響は非常きく、メディア&エンターテインメント業界における、新たな収益源の可能性も見えてきました。

注釈2  lookalike modeling:現在の顧客に似た、新しい顧客を見つけるための手法

[AITデータサイエンティストの視点]

(担当者 たくみ)AITデータサイエンティスト: 分析経験豊富なベテランデータサイエンティスト (担当者 あおば)AIT SE: SPSSを覚えたての新米SE あおば: ビッグデータと言われてずいぶん経ちましたが、顧客の行動データが大量に集まるようになると、どんないいことがあるんですか? たくみ: ビッグデータの使い道はたくさんある。その一つに「自社の優良顧客に似た人たち」を容易に見つけることができる点が挙げられるね。今回の事例だと、特にケーブルテレビやストリーム配信などは、lookalikeモデルを適用しやすい分野かもしれないね。 あおば: 言われてみれば、私はテレビをつけっぱなしにされていることが多いので、自分(または家庭)の好みが反映されやすいものかもしれません。 たくみ: 日本のメディア企業も、先行する欧米の事例を参考にしながら、番組配信のパーソナライゼーション/ターゲティングに備えることができるね。

予測分析で売り上げと利益率を向上させたFoodService Danmarkの事例

FoodService Danmarkのマーケティングを支えるIBM SPSS

デンマークの大手卸売り販売企業FoodService Danmarkは、IBM SPSSとIBM Cognosを導入し、マーケティング主導で売り上げと利益率を飛躍的に伸ばしました。同社のビジネスはほとんどB2Bであり、主な顧客は小売業者と食品加工会社で、売り上げと利益率の向上が経営課題でした。同社の戦略は、販売数量は多いが利益率の低い商品を、認知度は低いが利益率の高い商品とセットにして低価格で販売するというものです。同社は、顧客ごとにこのセット販売をダイナミックに定義することで、業績を向上させています。

オンラインショップの購買履歴から効果的なパッケージを予測

商品数が少ない場合には、パッケージにする商品の組み合わせを考えることは難しくありません。しかし、FoodServiceの取扱品目は30,000種類もあるため、容易なことではありませんでした。こうした問題を解決するために、同社はIBM SPSS ModelerとIBM SPSS Modeler Serverを導入。その結果、顧客企業のオンラインにおける行動履歴をもとにした予測分析により、顧客企業ごとに魅力的なパッケージングを提示することができ、売り上げと利益率を引き上げることに成功しました。さらに同社は、IBM Cognosによるアクティブレポートを活用して、どの組み合わせが売れたかを瞬時に把握し、改善サイクルを繰り返しています。

「アクティブレポートのおかげで、どの商品が一緒に買われることが多いのか、各商品間のシナジー、これまでのモデルから導かれる確実性・収益・粗利益・売り上げ総利益を瞬時に確認できる」とFoodService DanmarkのCFOであるNiels Peter Habekost氏は説明します。

“IBM SPSSのおかげで顧客企業ごとにカスタマイズされた購買体験を提供できる”

同社は今後、IBM SPSSの予測分析によって、各顧客の好みに合わせたウェブサイト構築や、顧客店舗における最適な商品配置の提案を計画しています。

[AITデータサイエンティストの視点]

(担当者 たくみ)AITデータサイエンティスト:分析経験豊富なベテランデータサイエンティスト (担当者 あおば)AIT SE:SPSSを覚えたての新米SE あおば:FoodService Danmarkの事例にある考え方は、日本の流通業界でもよく見られるケースですね。 たくみ:そうだね。 他にも、卸売業が自社の付加価値のために、小売業に対してこのような予測分析を行うこともあるよ。 あおば:価格競争から抜け出すための差別化要因として分析をするんでしょうね。顧客データを宝の山と考える企業が非常に増えてきているように思えます。 たくみ:この事例は典型的な併売分析の例で、売り上げや利益に貢献するアソシエーション(買い合わせ)を導き出している。注意したいのは、数万のアイテムをそのまま分析にかけても、意味のある結果が導き出せないことがあることだよ。商品をいかにカテゴライズして、意味のある分析を行うかが大事なポイントだね。

原文はこちら: http://www-03.ibm.com/software/businesscasestudies/