特型フォークリフト製造においてIBM SPSSを導入。受注成否予測モデルを活用によるリードタイム短縮を実現。 -株式会社豊田自動織機様
特型フォークリフト製造においてリードタイム短縮によりお客様のご要望にお応えすることを目的にIBM SPSSを導入 受注成否予測モデルを活用によるリードタイム短縮を実現
株式会社豊田自動織機 トヨタL&F (Logistics & Forklift) カンパニーでは、顧客個別仕様の特型 フォークリフトの受注から出荷までのリードタイム短縮によりお客様のご希望納期を実現するために、 IBMの統計解析ソフトウェア「IBM SPSS」(以下、SPSS)を導入しました。導入パートナーには、SPSS に関する豊富な知見をもつAITを選定。AITの支援を受けながら適合率90%以上の受注成否予測モデル を完成させ、受注確度の高いものから、事前設計を行うことでリードタイム短縮を実現。お客様満足度 が向上し、同社の売上・利益に貢献するという成果が得られています。
導入前の課題:特型フォークリフトのリードタイム短縮が課題に
株式会社豊田自動織機(以下、豊田自動織機)は、1926年に創立されたトヨタグループの源流にあたる繊維機械、産業車両、自動車・自動車部品の大手メーカーです。同社のトヨタL&Fカンパニーは、物流システム事業と産業車両事業を展開する社内カンパニーであり、主力製品のフォークリフトは世界トップクラスのシェアを獲得し、業界のリーダーとして認知されています。
トヨタL&Fカンパニーでは、あらかじめ仕様が決まった量産型の標準フォークリフトのほかに、物流現場固有のニーズに応じた顧客個別仕様の「特型フォークリフト」を受注生産しています。特型フォークリフトの設計を担当するCS開発部 室長の小紫 浩史氏は、近年特型フォークリフトの需要が増加するにつれて、さまざまな課題を抱えるようになったと話します。
「特型フォークリフトは標準フォークリフトと異なり、受注後にお客様が求める仕様に合わせてその都度設計する工程が必要になります。したがって標準フォークリフトに比べればリードタイムが必然的に長くなり、出荷までに時間がかかります。お客さまの希望納期通りにお届けしたいものの、受注してから設計を始めたのではご希望に沿えないケースも少なくありません。しかし、納期を間に合わせるために受注前から設計を始めた場合、万一受注できなければ、自部署はもちろん他の関連部署の工数さえも無駄にするリスクがありました」(小紫氏)
このようなリスクを最小化しつつ、お客様の希望納期に間に合わせるリードタイム短縮の施策を解決すべき課題だと認識していたCS開発部では、設計効率を高めるためのシステム改修やロジカルな自動処理の仕組みの構築など、さまざまな改善に取り組んでいます。
「そうした改善をギリギリまで実施した上で、さらに「受注前の事前設計」に本格的なチャレンジをすることにしました。しかし、事はそう簡単ではありません。事前設計を行うには、過去の実績データに基づいて引合納期照会段階において受注成否を予測し、受注の可能性が高い案件を抽出する必要があります。その受注成否予測をAI/機械学習または統計的な手法を用いたデータ分析を使って実現できないだろうかと考えました」(小紫氏)
採用の経緯:直感的なGUI操作でデータ分析が行えるSPSSを採用
受注成否を予測するためのデータ分析を行うには、統計解析ツールが必要です。そのツールとしてトヨタL&Fカンパニー CS開発部が注目したのが、SPSSでした。
「当時の上司から『SPSSという良いツールがある』という情報共有があり、まずはSPSSを知るためにAITが主催する体験セミナーへ参加しました。セミナーではSPSSの機能や使用感、特に直感的なGUI操作でデータ分析処理が行えるツールであることが分かりました。また、ExcelやCSVなどの多くのデータを容易に加工でき、最適な機械学習モデルを自動で選択できるなど多くのメリットや優位性を感じ、SPSSの導入を決断しました」(小紫氏)
SPSS導入後に最初に取り組んだのは、社内の商談結果が確定した過去の引合納期照会の実データを使用し、受注成否予測の機械学習モデルを作成することでした。
「不明点があるたびにAITのサポートを受けながら、決定木分析を用いた受注成否予測モデルのプロトタイプを比較的容易に作成できました。しかし、受注予測が失注した場合に発生する工数ロスを抑えるために関係部署と合意した適合率にはなかなか到達しません。そこでAITのアドバイスを参考に、ベテランの経験を説明変数化したりアンサンブル学習を用いたりして最終的なモデルを完成させることができました」(鈴木氏)
ベテランの経験を説明変数化するとは、引合納期照会を担当するベテランの、予測の視点(カンとコツ)に着目したものです。また、アンサンブル学習は、複数の学習結果を用いて1つの問題を解決する機械学習の手法です。これらの手法を用いることにより、最終的な適合率の向上に大きく寄与しました。
導入効果:モデル適合率90%を達成し売上・利益に貢献
完成した受注成否予測モデルを試行した結果、期待どおりの効果が得られる目途が立ったことで、受注成否予測モデルの予測結果を基幹システムと連携させる仕組みを構築し、実運用を開始することにしました。
「受注成否予測モデルと基幹システムをファイル授受という疎結合で連携させることにより、受注成否予測モデルを更新しても基幹システムへの影響を最小化するようにしました。SPSSでこの機能を実現するにあたっては『SPSS CADS(Collaboration and Deployment Services)』を用いてバッチ処理を実行しています。また、受注確度の算出結果を基幹データベースで保持するようにし、事前に算出した受注確度と実際の受注結果との比較を行って継続的に受注成否予測モデルの精度を向上する仕組みを構築しました」(鈴木氏)
現在運用中の受注成否予測モデルは、基幹データベースから登録された引合納期照会データを取得して対象の案件に対する受注確度を算出し、その結果を基幹システムが取得して受注確度を高・中・低の3段階に色分けして表示します。受注確度を数値で表すと判断に時間を要するため、直感的に判断できるインターフェイスにしています。
「当初開発したプロトタイプの適合率は約80%でしたが、現在運用している受注成否予測モデルの適合率は90%を超えています。基幹システムの改修後は、数カ月間の運用で26件の事前設計を実施してリードタイム短縮を実現した結果、22件が受注に成功しています。お客さまの希望に沿った納期を実現できたことにより、お客様のご期待に応え会社の売上・利益に貢献するという効果が得られました」(小紫氏)
今後の展望:誰でも業務のデータ分析を手軽に行える環境を目指す
トヨタL&Fカンパニー CS開発部による受注成否予測モデルの開発をきっかけに、SPSSの使用するユーザーは少しずつ増え始めています。
「今後はユーザーのレベルアップを図り、誰でも業務のデータ分析を手軽に行える環境を整えて業務改善につなげていきたいと思います。現時点では公表できる段階にありませんが、将来的にはSPSSの活用用途を広げ、より大きな業務改善に導入することも視野に入れています」(小紫氏)
SPSSの導入を支援したAITに対しても、さらなる支援を期待していると話します。
「AITには、データの理解や準備をしっかり行うことの重要性を教えて頂きました。また単にSPSSの操作方法だけではなく、当社の業務を理解したコンサルティング的要素を加味したサポートを受けたことで、当社の業務を改善することもできました。AITには今後も引き続き、AI/機械学習など最新技術を取り入れた情報システムの活用にも支援をお願いしたいと考えています」(小紫氏)
豊田自動織機様 技報 No.71 に、本件に係る論文が掲載されております。 豊田自動織機技報 2020.11 No.71 「機械学習を活用した受注成否予測による特型フォークリフトのリードタイム短縮」
HP URL https://www.toyota-shokki.co.jp/products/technical/
※2021年3月取材
実績企業プロフィール
株式会社豊田自動織機様
所在地 | 愛知県刈谷市豊田町2-1 |
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創業 | 1926年(大正15年) 11月 |
資本金 | 804億円 (2020年3月31日現在) |
従業員数 | 66,478人 (2020年3月31日現在) |
事業内容 | 繊維機械、産業車両、自動車・自動車部品の製造・販売 |